幽霊の正体見たり枯れ尾花
幽霊の正体見たり枯れ尾花
本日宿泊する旅館に向かい道を急いでいました。
少し、日も落ち、山道は薄暗くなっております。
お腹も空き、今日の旅の疲れからか足が重くなっています。
山道の向こうの遠方には旅館らしき明かりも見えています。
「やれやれ!このまま真っ暗になったら、右も左もわからない。」
それにしても灯りひとつない夜半の山道は気持ち悪い。
秋のすすきが風に揺れてザワザワと騒いでいる。
その間を縫って山道を急ぐ人ひとり、少し怖がらせてやれ!
そんなささやきにも聞こえます。
昼間であればどうってないこの道を急げば急ぐ程、
行きさは遠のくようだ。
そう言えば、昨日よるに聞いた話し
「山道は夜には歩かないほうがいいぞ。
夜には山道は迷うぞ!
灯りが見えているのに一向に近づけねぇ。
手の届く灯りが見えるのは幻想じゃ。
そりゃ~蛍火じゃ。
行けど行けどあっちには着けねぇ。
山の主にや怒らせるな。
谷に引き込まれるぞ!」
くねくね道を曲がって、背の高いススキ野原が過ぎ、
杉木立の入り口が見えて来ました。
ほっと安堵、そして杉木立の入り口に人家も見える。
そして、薄明かりも見える。
ここで旅館の道を聞いてみよう。 出来ればタクシーでも呼んで貰おう。
茅葺き屋根の下、裸電球の下で、声を掛ける、「こんばんわ!」
「こんばんわ!・・・どなたか居ませんか?道をお尋ねします。」
そのときです。 木戸の窓から見えたのは、
後ろ向きの長い髪の毛の女性の後ろ姿!
思わず、尻もちを付きかけ後ずさりしました。
暫くして、長い髪の毛の女性が振り返りました。
『どうかしましたぁ~』
それは年配の普通の女性でした。
こちらは気が動転して勝手に怖い想像をしただけでした。
そのとき気が付きました。
幽霊の正体見たり枯れ尾花